不妊治療と仕事の両立は、多くの人にとって大きな課題です。
通院による時間的な制約や心身の負担を抱えながら、職場にどう伝えるべきか悩むケースは少なくありません。
この記事では、不妊治療について会社や上司に伝えるべきかどうかの判断材料から、具体的なタイミングや例文、活用できる社内制度まで、実践的な職場への伝え方を解説します。
不妊治療と仕事の両立で多くの人が直面する悩み
不妊治療と仕事の両立においては、多くの人が様々な悩みに直面します。
治療では排卵のタイミングに合わせて通院する必要があるため、急な休みや遅刻・早退が増え、職場に気兼ねしてしまうことがあります。
また、治療による身体的な負担や、ホルモンバランスの変化による精神的な浮き沈みも少なくありません。
周囲に理解されないことへの不安や、キャリア形成への影響といった心配も、大きなストレスの原因となり得ます。
不妊治療について職場に報告するメリット
不妊治療について職場に報告することで、いくつかのメリットが期待できます。
まず、治療を理由とした休暇の取得や勤務時間の調整がしやすくなる点が挙げられます。
事前に状況を共有しておくことで、上司や同僚からの理解を得られやすくなり、業務の引き継ぎやサポート体制を整えるための協力も仰ぎやすくなるでしょう。
職場の理解は、後ろめたさを感じることなく治療に専念できる環境につながり、精神的な負担の軽減にもなります。
不妊治療について職場に報告する際に懸念されるデメリット
不妊治療の事実を報告することには、デメリットも考えられます。
プライベートな情報をどこまで開示すべきかという問題に加え、アウティングのリスクもゼロではありません。
また、治療への無理解から心ない言葉をかけられたり、マタニティハラスメントにつながったりする可能性も懸念されます。
昇進や異動などキャリアへの影響を心配し、職場に言うか迷う人も少なくありません。
【5つのステップ】上司や同僚への上手な伝え方と例文
不妊治療について職場で伝える際は、事前の準備が大切です。伝える範囲やタイミングを慎重に検討し、話す内容を整理しておくことで、円滑なコミュニケーションが可能になります。
ここでは、不妊治療について職場の上司や同僚に伝え、理解と協力を得るためのポイントをいくつかご紹介します。これから職場に伝えることを検討している方は、ぜひ参考にしてください。
ステップ1:誰にどこまで伝えるかの範囲を決める
最初に、不妊治療の事実を誰にどこまで伝えるか、その範囲を明確に定めておきましょう。
一般的には、勤怠管理や業務調整の権限を持つ直属の上司にまず相談するのが基本です。
人事部や総務部への報告が必要な場合もあります。
同僚に伝えるかどうかは、業務の連携度合いに応じて判断します。
伝える内容も、単に「通院のため休みが増える」という事実のみにするか、不妊治療という理由まで話すかを事前に決めておくと、話がぶれずに済みます。
信頼できる先輩に先に相談してみるのも一つの方法です。
ステップ2:報告するのに最適なタイミングを見極める
報告する際は、タイミングの見極めが重要です。
上司が多忙な時間帯や、職場の繁忙期は避け、比較的落ち着いて話ができる時期を選びましょう。
1on1ミーティングや定期面談など、個別に話せる機会を活用するのが効果的です。
急な休みが必要になる前に、あらかじめ相談しておくことで、職場側も人員配置などの準備がしやすくなります。
通院スケジュールがある程度見えている段階で、余裕を持って伝えることで、円滑な業務調整につながります。
ステップ3:事前に伝えるべき要点を整理しておく
上司に報告する前に、伝えるべき要点を整理し、メモなどにまとめておくと冷静に話を進められます。
伝えるべき内容は、現在不妊治療中であるという事実、通院の頻度や必要な時間、それに伴う業務への具体的な影響、そして休暇や時短勤務など会社に配慮してほしい事項です。
併せて、仕事に対する意欲や責任感は変わらないという姿勢を示すことも大切です。
要点を簡潔にまとめておくことで、感情的になることなく、必要な情報を的確に伝えられます。
ステップ4:【例文紹介】上司へ具体的に伝える際の切り出し方
上司への伝え方で悩む場合は、具体的な例文を参考にすると良いでしょう。
まずは「少しお時間をいただけますでしょうか。プライベートなことでご相談したい件がございます」と、落ち着いて話せる時間を確保します。
そして、「実は現在、不妊治療をしていまして、定期的な通院が必要です。急な日程変更でご迷惑をおかけする可能性もありますが、業務に支障が出ないよう最大限調整しますので、ご相談させていただけますでしょうか」といった形で、事実と業務への配慮、相談したい旨を伝えます。
誠実な姿勢で話すことが、理解を得るための第一歩となります。
ステップ5:同僚へ共有する場合に配慮したいこと
同僚への共有は、業務上どうしても協力が必要な範囲に留めるのが賢明です。
伝えるかどうかは、まず上司に相談してから判断しましょう。
もし伝える場合でも、治療の詳しい内容まで話す必要はありません。
「通院のため、月に数回お休みをいただくことがあります。ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いします」など、業務に必要な情報のみを簡潔に伝えます。
周囲の負担が増えることへの配慮と感謝の気持ちを言葉で示すことで、良好な関係を保ちながら協力を得やすくなります。
仕事との両立をサポートしてくれる会社の制度を確認しよう
不妊治療と仕事を両立させるためには、会社が設けているサポート制度を最大限に活用することが重要です。
企業によっては、法律で定められた制度以上に、従業員が働きやすい環境を整えるための独自の取り組みを行っている場合があります。
まずは自社の就業規則を確認したり、人事部に問い合わせたりして、どのような制度が利用できるのかを把握することから始めましょう。
不妊治療休暇や休職制度の有無を就業規則で調べる
まずは会社の就業規則を確認し、不妊治療を目的とした休暇制度や休職制度が設けられていないか調べてみましょう。
近年、従業員のワークライフバランスを支援するため、「不妊治療休暇」や「ファミリーサポート休暇」といった名称で特別な休暇制度を導入する企業が増えています。
制度がない場合でも、失効した年次有給休暇を積み立てて特定の目的に利用できる「積立保存休暇制度」が適用できるケースもあります。
制度の有無だけでなく、取得条件や申請手続きについても事前に確認しておくことが大切です。
時差出勤や在宅勤務など柔軟な働き方を相談する
通院と仕事の時間を調整するために、柔軟な働き方ができる制度の活用も有効な手段です。
フレックスタイム制度や時差出勤制度があれば、通院時間に合わせて始業・終業時刻を調整できます。
また、在宅勤務(リモートワーク)や短時間勤務制度を利用することで、通勤の負担を軽減し、治療に時間を充てやすくなります。
自社にこれらの制度があるかを確認し、不妊治療を理由に利用可能かどうかを上司や人事部に相談してみましょう。
制度がなくても、個別の事情に応じて柔軟な対応をとってくれる場合もあります。
直接話しにくい時に活用できる「不妊治療連絡カード」とは
口頭で不妊治療について説明するのが難しい、あるいは職場に言うこと自体にためらいがある場合に役立つツールとして、厚生労働省が作成した「不妊治療連絡カード」があります。
このカードは、治療と仕事の両立にあたって必要な配慮事項を勤務先に的確に伝えるためのものです。
治療内容や通院の頻度、勤務上の配慮希望などを記載する様式になっており、医師に記入してもらうことも可能です。
これを提出することで、プライベートな内容を細かく話す負担を減らしつつ、必要な情報を正確に伝えられます。
まとめ
不妊治療と仕事の両立において、職場への伝え方は非常に重要な要素です。
伝えることのメリットとデメリットを理解した上で、誰に、いつ、何を話すのかを事前に計画することが求められます。
まずは直属の上司に相談し、利用できる社内制度を確認することから始めましょう。
不妊治療休暇やフレックスタイム制度、在宅勤務といった選択肢を活用することで、心身の負担を軽減しながら治療を続けることが可能になります。
直接話しにくい場合は「不妊治療連絡カード」のようなツールを利用するのも一つの方法です。
一人で抱え込まず、利用できるサポートを活用しながら進めていくことが大切です。








