生理不順があると妊娠しにくいのではないかと不安に感じるかもしれません。
実際に、生理不順は妊娠のしやすさに影響を与えることがあります。
しかし、生理不順が必ずしも不妊につながるわけではなく、原因を特定し適切に対処することが重要です。
この記事では、生理不順と妊娠の関係、考えられる原因、自分でできる生活改善、そして婦人科を受診する目安について解説します。
そもそも生理不順とは?正常な月経周期の定義
正常な月経周期は、生理が始まった日から次の生理が始まる前日までの日数が25日から38日の範囲内であり、その変動が6日以内である状態を指します。
これに当てはまらず、周期が24日以内と短すぎる「頻発月経」、39日以上と長すぎる「稀発月経」、または周期が毎回大きく変動する「不整周期月経」などをまとめて「生理不順(月経不順)」と呼びます。
生理不順だと妊娠しにくいと言われる3つの医学的理由
生理不順が妊娠確率に影響を及ぼす背景には、医学的な理由が存在します。
主な要因として、卵巣機能の低下などによる排卵の問題、排卵日が予測しづらいことによるタイミングの困難さ、そしてホルモンバランスの乱れによる子宮内膜の状態の3点が挙げられます。
これらの問題が、妊娠の成立を妨げる一因となることがあります。
理由1:排卵が正常に行われていない可能性がある
生理不順の場合、生理のような出血があっても実際には排卵が起きていない「無排卵月経」の可能性があります。
排卵がなければ、精子と卵子が出会うことがないため妊娠は成立しません。
また、排卵が不定期にしか起こらない場合、妊娠の機会そのものが少なくなります。
基礎体温を測定しても体温が低温期のまま上昇しない場合、無排卵が疑われるため注意が必要です。
生理予定日も定まらず、体の変化を把握しにくくなります。
理由2:排卵日の予測が困難でタイミングがとりにくい
妊娠の確率を高めるためには、排卵日の周辺で性交渉のタイミングを合わせることが重要です。
しかし、生理周期が安定していないと、次回の排卵日がいつになるのかを予測するのが非常に困難になります。
市販の排卵検査薬や基礎体温の記録も、周期が不規則な場合は判断が難しくなることがあります。
このタイミングの合わせにくさが、結果として不妊の一因となってしまうケースは少なくありません。
理由3:子宮内膜が着床に適した状態に整わない
正常な排卵後、卵巣から分泌される黄体ホルモンの働きによって、子宮内膜は受精卵が着床しやすいように厚くふかふかな状態に変化します。
しかし、生理不順の背景にあるホルモンバランスの乱れ、特に黄体機能不全などがあると、この黄体ホルモンの分泌が不十分になります。
その結果、子宮内膜が十分に厚くならず、受精卵が着床しにくい状態や、着床しても維持できずに流産につながる可能性があります。
長期間生理が来ない状態も、こうしたホルモンの乱れを示唆しています。
注意すべき生理不順の裏に隠れている病気の可能性
生理不順は、単なるストレスや生活習慣の乱れだけでなく、治療が必要な病気が原因となっている場合があります。
放置すると不妊のリスクを高めるだけでなく、将来的な健康に影響を及ぼす可能性も否定できません。
特に、強い月経痛を伴う月経困難症や不正出血など、他の症状が見られる場合は注意が必要です。
代表的な疾患として、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)や黄体機能不全、甲状腺機能の異常などが挙げられます。
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は、卵巣の中で多数の小さな卵胞が発育するものの、成熟して排卵されるまでに至らず、卵巣内に留まってしまう疾患です。
排卵障害を引き起こすため、生理不順や無月経の主な原因となります。
また、男性ホルモンの値が高くなる傾向があり、にきびや多毛、肥満といった症状を伴うこともあります。
適切な排卵誘発治療などを行えば、妊娠できる可能性は十分にあります。
黄体機能不全
黄体機能不全とは、排卵後に形成される黄体からのホルモン(プロゲステロン)分泌が不十分な状態を指します。
プロゲステロンは、子宮内膜を受精卵が着床しやすい状態に整え、妊娠を維持する重要な役割を担っています。
このホルモンが不足すると、子宮内膜が十分に成熟せず、着床しにくくなったり、妊娠初期の流産の原因になったりすることがあります。
基礎体温をつけた際に、高温期が10日未満と短いことが診断の手がかりになります。
高プロラクチン血症
プロラクチンは、脳の下垂体から分泌されるホルモンで、本来は産後の母乳分泌を促す働きをします。
授乳期でもないのにこのプロラクチンの血中濃度が高くなる状態が「高プロラクチン血症」です。
プロラクチンには排卵を抑制する作用があるため、数値が高いと排卵障害が起こり、生理不順や無月経を招きます。
原因は、ストレス、薬剤の副作用、下垂体の腫瘍など多岐にわたります。
甲状腺機能の異常
のどぼとけの下にある甲状腺から分泌される甲状腺ホルモンは、全身の代謝を調節するだけでなく、女性ホルモンの働きにも深く関わっています。
このホルモンの分泌が過剰になる「甲状腺機能亢進症(バセドウ病など)」や、不足する「甲状腺機能低下症(橋本病など)」は、卵巣の機能に影響を及ぼし、排卵障害や生理不順の原因となることがあります。
疲れやすさ、体重の増減、動悸など、月経以外の症状を伴うことも特徴です。
【セルフチェック】婦人科の受診を検討すべき生理不順の症状
生理不順は多くの女性が経験するものですが、中には医療機関での検査や治療が必要なケースも含まれます。
以下に挙げるような症状が見られる場合は、放置せずに婦人科を受診することを検討してください。
自分の体の状態を正しく把握し、専門家のアドバイスを受けることが、不安の解消と適切な対策への第一歩です。
3ヶ月以上生理がきていない
妊娠の可能性がないにもかかわらず、3ヶ月以上生理がきていない状態は「続発性無月経」と呼ばれ、医学的な介入が必要なサインです。
背景には、強いストレスや急激な体重減少のほか、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)や高プロラクチン血症、早発卵巣不全といった疾患が隠れている可能性があります。
ホルモンバランスが大きく乱れている状態であり、放置すると子宮や卵巣の機能低下につながるため、必ず婦人科を受診しましょう。
生理周期が24日以内または39日以上と極端に変動する
生理周期が24日以内と短い「頻発月経」は、排卵が正常に行われていない、あるいは排卵から生理までの期間(黄体期)が短い黄体機能不全の可能性があります。
一方で、周期が39日以上と長い「稀発月経」は、排卵までに時間がかかっている排卵遅延や、排卵がたまにしか起こらない状態が考えられます。
どちらの場合も、妊娠を希望する際には排卵の有無を確認する必要があるため、一度婦人科で相談することをおすすめします。
不正出血や日常生活に支障をきたす月経痛がある
生理期間以外にみられる出血(不正出血)は、ホルモンバランスの乱れだけでなく、子宮頸管ポリープや子宮体がん、クラミジア感染症などのサインである可能性も考えられます。
また、鎮痛剤を飲んでも効かないほどのひどい月経痛や、月経のたびに痛みが強くなる場合は、子宮内膜症や子宮筋腫といった病気が隠れていることもあります。
これらの疾患は不妊の原因にもなり得るため、早めの検査が重要です。
自分でできる!生理不順を改善するための生活習慣5つの見直しポイント
女性のホルモンバランスは非常にデリケートで、日々の生活習慣に大きく影響されます。
特にストレスや疲労、栄養状態の乱れは、脳の視床下部や下垂体の働きを鈍らせ、生理不順を引き起こす原因となり得ます。
病院での治療と並行して、または軽度の生理不順を改善するために、まずは以下の5つのポイントを見直し、心と体の調子を整えることから始めましょう。
栄養バランスを意識した食事を3食とる
ホルモンは食事から摂取する栄養素を材料にして作られるため、食生活は非常に重要です。
特定の食品だけを食べるような偏った食事や、欠食はホルモンバランスの乱れに直結します。
特に、良質なたんぱく質、ビタミン、ミネラルをバランス良く摂ることが大切です。
1日3食をできるだけ決まった時間にとり、体に必要な栄養を安定して供給するよう心がけましょう。
質の高い睡眠を確保して体を十分に休ませる
睡眠は、心身の疲労を回復させ、自律神経やホルモンバランスを整えるために不可欠です。
睡眠不足が続くと、ホルモン分泌の司令塔である脳が正常に機能しにくくなります。
毎日6〜8時間程度の睡眠時間を確保することを目標にしましょう。
また、時間だけでなく質も重要です。
就寝前のスマートフォンやパソコンの使用を控え、リラックスできる環境を整えるなど、質の高い睡眠をとるための工夫を取り入れましょう。
自分に合った方法で心身のストレスを解消する
過度な精神的・身体的ストレスは、ホルモン分泌をコントロールしている脳の視床下部に直接影響を与え、排卵を抑制する大きな原因となります。
仕事や人間関係など、ストレスの原因を完全になくすことは難しいかもしれませんが、上手に発散する方法を見つけることが大切です。
軽い運動やヨガ、趣味に没頭する時間、友人と話すなど、自分が心からリラックスできる時間を作りましょう。
適正体重を維持し過度なダイエットを避ける
体重の急激な変動は、ホルモンバランスに大きな影響を与えます。
特に、過度な食事制限による急激な体重減少は、体が生命の危機と判断して生理を止めてしまう「体重減少性無月経」を引き起こします。
逆に、肥満も排卵障害の原因となることが知られています。
BMI(体重kg÷(身長m×身長m))が18.5〜25の範囲内である適正体重を目標に、極端なダイエットは避けて健康的な体型を維持しましょう。
体を冷やさないように服装や食事を工夫する
体が冷えると、全身の血行が悪化します。
特に骨盤内の血流が滞ると、卵巣や子宮の機能が低下し、生理不順や月経痛の原因となることがあります。
夏場の冷房対策や冬の防寒はもちろん、普段から腹巻きやレッグウォーマーを活用したり、シャワーだけで済ませずに湯船にゆっくり浸かったりする習慣がおすすめです。
また、冷たい飲食物を避け、体を温める食材を意識的に摂ることも効果的です。
病院ではどんな検査や治療を行う?生理不順に対するアプローチ
婦人科を受診すると、まずは丁寧な問診から始まります。
最終月経日、月経周期、過去の病歴や妊娠・出産経験、現在の生活習慣などについて質問されます。
その後、内診や経腟超音波(エコー)検査で子宮や卵巣に器質的な異常がないかを確認します。
これらの基本的な診察と検査を通して、生理不順の原因を探り、一人ひとりの状態や妊娠希望の有無に合わせた治療方針を立てていきます。
まずは基礎体温の計測とホルモン検査で原因を探る
生理不順の原因を特定するために、血液検査によるホルモン値の測定が行われます。
卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)、エストロゲン(卵胞ホルモン)、プロゲステロン(黄体ホルモン)といった女性ホルモンのほか、高プロラクチン血症や甲状腺機能異常が疑われる場合は、プロラクチン値や甲状腺ホルモン値も調べます。
また、事前に数周期分の基礎体温を記録しておくと、排卵の有無や黄体機能の状態を把握する上で非常に有用な情報となります。
排卵を促すための排卵誘発剤の使用
検査の結果、排卵が正常に行われていない「排卵障害」が原因であると診断され、かつ妊娠を希望している場合には、排卵誘発剤による治療が選択されます。
クロミフェンなどの内服薬や、hMG-hCG療法といった注射薬を用いて卵胞の発育を促し、排卵を誘起します。
治療中は、超音波検査で卵胞の大きさや子宮内膜の厚さを定期的に確認しながら、最適なタイミングで性交渉を持つタイミング法や、人工授精などと組み合わせて行います。
ホルモンバランスを整えるためのホルモン療法
妊娠をすぐに希望していない場合や、ホルモン分泌そのものの乱れを整える必要がある場合には、ホルモン療法が行われます。
代表的なのは、低用量ピルや中用量ピル、黄体ホルモン剤などを用いた薬物療法です。
これらのホルモン剤を周期的に服用することで、乱れた月経周期を整え、ホルモンバランスの回復を促します。
また、将来の妊娠に備えて子宮や卵巣の状態を良好に保つ目的でも用いられます。
生理不順と妊娠に関するよくある質問
生理不順と妊娠に関する、多くの人が抱く疑問についてお答えします。
Q1. 生理不順でも自然に妊娠することはできますか?
可能です。
生理不順でも排卵が起こっていれば、自然妊娠の可能性はあります。
ただし、排卵日が特定しにくいためタイミングが合わせづらく、周期が正常な人と比べて妊娠しにくい傾向はあります。
不順の程度や原因によるため、まずは婦人科で相談することをおすすめします。
Q2. 基礎体温をつけるとどんなメリットがありますか?
排卵の有無や、おおよその排卵時期を推測できるのが最大のメリットです。
正常に排卵していれば、体温が低温期と高温期の二相に分かれます。
この記録は、婦人科を受診した際に、生理不順の原因を探るための重要な情報となり、診断や治療方針の決定に役立ちます。
Q3. どれくらいの期間、生理不順が続いたら病院に行くべきですか?
3ヶ月以上生理がこない場合はすぐに受診してください。
また、周期が24日以内や39日以上といった状態が数周期続く場合や、妊娠を希望している場合は、期間にかかわらず早めに婦人科へ相談することをおすすめします。
放置せずに原因を知ることが大切です。
まとめ
生理不順は、排卵が正常に行われていない、排卵日の予測が困難、子宮内膜の状態が整わないといった理由から、妊娠しにくい原因となることがあります。
生活習慣の見直しで改善が見られる場合もありますが、背景に多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)などの病気が隠れている可能性も考えられます。
特に3ヶ月以上生理がこない、周期の変動が激しいなどの症状があれば、放置せずに婦人科を受診しましょう。
原因を特定し、適切な対処を行うことが妊娠への近道です。








