卵巣嚢腫があっても妊娠できる?妊娠中のリスクや治療法を解説

公開日:2026/03/31 

更新日:2026/03/31

卵巣嚢腫があると診断された場合、妊娠できるか不安に感じるかもしれません。
結論から言うと、多くの場合で妊娠・出産は可能です。

しかし、嚢腫の種類や大きさによっては、不妊の原因になったり、妊娠中に合併症を引き起こしたりするリスクもあります。
そのため、妊娠を希望する場合や妊娠中に見つかった場合は、医師による適切な診断と治療、管理が重要になります。

目次

そもそも卵巣嚢腫とは?主な症状と原因について

卵巣嚢腫とは、卵巣の中に液体や脂肪などが溜まってできる袋状の腫瘍(嚢胞)のことです。
卵巣にできる腫瘍の約9割は良性であり、すぐに生命に関わることは少ないとされています。

原因ははっきりと分かっていませんが、女性ホルモンの影響や、子宮内膜症などが関係していると考えられています。
嚢腫の中身によっていくつかの種類に分けられ、それぞれ特徴が異なります。

自覚症状がほとんどないケースが多い

卵巣嚢腫は、初期段階では自覚症状がほとんどないことが特徴です。
多くの場合、嚢腫がそれほど大きくないうちは無症状で経過します。

そのため、妊婦健診や会社の健康診断、他の病気の診察などで偶然発見されるケースが少なくありません。
症状が現れる場合は、嚢腫が大きくなってからで、下腹部痛や腹部の膨満感、頻尿、便秘などを感じることがあります。

卵巣嚢腫の代表的な4つの種類とそれぞれの特徴

卵巣嚢腫は、内容物によって主に4つの種類に分類されます。
卵巣の表面を覆う細胞から発生する「漿液性嚢胞」「粘液性嚢胞」、卵子の元になる細胞から発生する「皮様嚢腫(奇形腫)」、そして子宮内膜症が卵巣で増殖してできる「チョコレート嚢胞」です。

これらはほとんどが良性ですが、まれに悪性の境界型腫瘍や卵巣がんである可能性も否定できないため、正確な診断が重要です。

卵巣嚢腫が妊娠に与える影響とは

卵巣嚢腫が妊娠に与える影響は、その種類や大きさによって異なります。
嚢腫があっても排卵が正常に行われていれば、妊娠の妨げにならないことも多いです。

しかし、妊娠すると子宮が大きくなることで、茎捻転などのリスクが高まる可能性があります。
また、チョコレート嚢胞のように不妊や流産のリスクを高めることがあるため、注意深い経過観察が必要です。

卵巣嚢腫があっても多くの場合は妊娠・出産が可能

卵巣嚢腫を抱えていても、多くの場合は問題なく妊娠し、無事に出産を迎えることが可能です。
嚢腫が小さく、特に症状がなければ、妊娠の継続に大きな影響を与えないことがほとんどです。

妊娠したいという希望がある場合は、まず医師に相談し、嚢腫の状態を正確に把握することが大切です。
その上で、経過観察を続けるか、治療を優先するかなど、最適な方針を立てて妊娠に臨むことが求められます。

不妊の原因になり得る「チョコレート嚢胞」について

チョコレート嚢胞は、子宮内膜症性卵巣嚢胞とも呼ばれ、不妊の原因となることがあります。
これは、嚢胞が卵巣内で炎症を引き起こし、卵子の質の低下や卵巣機能の低下を招くためです。

また、嚢胞が周囲の組織と癒着することで、卵管の通過性が悪くなり、受精卵が子宮に到達しにくくなることもあります。
そのため、チョコレート嚢胞があると診断された場合は、不妊治療も視野に入れた管理が必要になる場合があります。

【妊活中】妊娠前に卵巣嚢腫が見つかった場合の対処法

妊活中や妊娠前に卵巣嚢腫が見つかった場合、その対処法は嚢腫の種類、大きさ、症状の有無、年齢などを総合的に考慮して決定されます。
すぐに治療が必要なケースもあれば、経過観察をしながらタイミング法や不妊治療を進める場合もあります。

まずは専門医による正確な診断を受け、妊娠に向けた最適なプランを立てることが重要です。

手術をせずに経過観察を行うケース

卵巣嚢腫が比較的小さく(5cm未満)、症状がなく、超音波検査などで良性と判断される場合は、手術をしないで定期的に経過観察を行うことが一般的です。
特に妊娠を希望している場合、不要な手術は卵巣への負担になる可能性も考慮されます。

数ヶ月に一度の婦人科検診で嚢腫の大きさに変化がないかを確認しながら、妊活を進めることができます。
手術ができないわけではなく、リスクとベネフィットを考慮した上での選択となります。

妊娠の前に手術を検討する基準

妊娠前に手術を検討する主な基準は、嚢腫の大きさと種類、そして症状の有無です。
嚢腫が大きい場合や、妊娠中に大きくなる可能性がある場合は、茎捻転や破裂のリスクを避けるために手術による摘出が推奨されることがあります。

また、チョコレート嚢胞が不妊の原因となっている場合や、悪性が疑われる場合も、妊娠前の手術が選択肢となります。
手術の必要性は、個々の状況に応じて医師が慎重に判断します。

嚢腫の大きさ(5〜6cm)が手術を判断する一つの目安

卵巣嚢腫の手術を判断する際、大きさは重要な指標の一つです。
一般的に、直径が5cmから6cmを超えると、妊娠中に子宮が大きくなる影響で茎捻転を起こすリスクが高まるとされています。

そのため、このサイズが手術を検討する一つの目安となります。
特に7cm以上の大きな嚢腫や、茎捻転のリスクが高い形状をしている場合は、妊娠前の手術が強く推奨される傾向にあります。

【妊娠中】卵巣嚢腫が発覚した際のリスクと注意点

妊娠中の健診で初めて卵巣嚢腫が発覚することも少なくありません。
妊娠したことによるホルモンバランスの変化で嚢腫が大きくなる場合や、子宮が大きくなることで合併症のリスクが生じることがあります。

過度に心配する必要はありませんが、起こりうるリスクを理解し、医師の指示に従って慎重に経過を観察することが大切です。

赤ちゃん(胎児)への直接的な影響は少ない

卵巣嚢腫そのものが、お腹の中の赤ちゃん(胎児)の発育や健康に直接的な悪影響を及ぼすことはほとんどありません。
嚢腫があるからといって、胎児に奇形が生じたり、発育が妨げられたりする心配は基本的に不要です。

ただし、後述する合併症が起きた場合には、母体の状態が悪化し、間接的に胎児へ影響が及ぶ可能性はあります。
妊孕性への影響とは別に、妊娠後の管理が重要となります。

注意すべき合併症「茎捻転」が起こる可能性

妊娠中に特に注意すべき合併症が「茎捻転」です。
これは、卵巣と子宮をつなぐ部分が根元からねじれてしまう状態で、血流が途絶え、激しい痛みを引き起こします。
妊娠中は子宮が大きくなることで卵巣の位置が変わりやすく、特に5cm以上の嚢腫で起こりやすいとされます。

茎捻転が起きた場合は、緊急手術が必要になることが多く、我慢できないほどの突然の下腹部痛や吐き気といった症状が現れます。

嚢腫が破裂するリスク

嚢腫が非常に大きくなったり、何らかの衝撃が加わったりすることで、嚢腫の壁が破れて内容物が腹腔内に漏れ出す「破裂」が起こるリスクもあります。
破裂すると、内容物による刺激で腹膜炎などを引き起こし、激しい腹痛や発熱を伴うことがあります。
この場合も緊急手術が必要となる可能性が高いため、腹部に強い痛みを感じた際は速やかに医療機関を受診する必要があります。

妊娠初期特有の自然に消失する嚢胞もある

妊娠初期に見つかる卵巣の腫れの中には、妊娠に伴うホルモンの影響で一時的にできる「ルテイン嚢胞」と呼ばれるものがあります。
これは生理的な嚢胞であり、病的なものではありません。
多くの場合、妊娠16週頃までには自然に小さくなるか、消失します。

そのため、妊娠初期に卵巣の腫れを指摘されても、すぐに手術が必要となるわけではなく、経過観察となることがほとんどです。

卵巣嚢腫の主な検査方法

卵巣嚢腫が疑われる場合、その有無や大きさ、種類、悪性の可能性などを調べるためにいくつかの検査が行われます。
これらの検査結果を総合的に判断し、今後の治療方針が決定されます。
主に、超音波検査、MRI検査、腫瘍マーカーが用いられます。

超音波(エコー)検査で大きさや形状を確認する

超音波(エコー)検査は、卵巣嚢腫の診断において最も基本的な検査です。
プローブと呼ばれる器具を腟内に入れる経腟エコーや、お腹の上から当てる経腹エコーがあります。
この検査によって、嚢腫の有無、位置、大きさ、形状、内部の状態(液体か固形成分か)などをリアルタイムで確認することが可能です。

身体への負担が少なく、簡便に行えるため、定期的な経過観察にも用いられます。

MRI検査で嚢腫の内部を詳しく調べる

MRI検査は、磁気を利用して体の断面を撮影する検査です。
超音波検査よりもさらに詳しく嚢腫の内部構造を調べることができます。
特に、嚢腫の中身が液体なのか、脂肪や血液なのかを判別するのに優れています。

良性か悪性かの鑑別や、周囲の臓器との癒着の程度を評価するためにも有用な検査です。

腫瘍マーカー(血液検査)で悪性の可能性を判断する

腫瘍マーカーとは、がん細胞が存在すると血液中に増加する特定の物質のことです。
血液検査でこの数値を測定し、悪性の可能性を判断する補助的な診断材料とします。
ただし、腫瘍マーカーは卵巣嚢腫以外の良性疾患(子宮内膜症や子宮筋腫など)や炎症、妊娠などでも数値が上昇することがあります。

そのため、この検査だけで診断が確定するわけではなく、陽性反応が出ても必ずしも悪性とは限りません。

卵巣嚢腫の治療方針と手術について

卵巣嚢腫の治療方針は、年齢、妊娠の希望、嚢腫の大きさや種類、症状の有無などを総合的に考慮して決定されます。
経過観察、薬物療法、手術といった選択肢があります。
子宮筋腫とは異なる病気であり、治療法も異なります。

手術後は、嚢腫の種類によって再発の可能性もあるため、定期的な検診が必要です。

身体への負担が少ない腹腔鏡手術

良性の卵巣嚢腫の手術では、腹腔鏡手術が第一選択となることが多くなっています。
これは、お腹に数カ所の小さな穴を開け、そこからカメラ(腹腔鏡)や手術器具を挿入して嚢腫を摘出する方法です。
開腹手術に比べて傷が小さく、術後の痛みが少ないため、入院期間が短く、社会復帰が早いというメリットがあります。

多くの手術がこの方法で行われています。

嚢腫が大きい場合や悪性が疑われる際の開腹手術

嚢腫が非常に大きい場合(10cmを超えるなど)、悪性の可能性が高い場合、または周囲の臓器との癒着がひどいと予想される場合には、開腹手術が選択されます。
下腹部を縦または横に切開し、医師が直接目で見て安全に嚢腫を摘出する方法です。
腹腔鏡手術に比べて身体への負担は大きくなりますが、より複雑な状況に対応できるという利点があります。

妊娠中に手術が必要になった場合の最適なタイミング

妊娠中に茎捻転や破裂などが起こり、緊急手術が必要になった場合を除き、予定手術を行う場合は、胎児への影響が少なく、比較的流産のリスクが低い安定期(妊娠中期)が選ばれるのが一般的です。
具体的には、妊娠16週から27週頃が手術の最適なタイミングとされています。
この時期であれば、胎児の重要な器官形成期を過ぎており、子宮もまだそれほど大きくないため、手術を行いやすいとされています。

卵巣嚢腫と妊娠に関するよくある質問

ここでは、卵巣嚢腫と妊娠に関して、患者から寄せられることの多いよくある質問とその回答を紹介します。
診断を受けて不安を感じている方は参考にしてください。

Q1.卵巣嚢腫があると診断されましたが、自然妊娠は可能ですか?

嚢腫の種類や大きさによりますが、多くの場合で自然妊娠は可能です。
排卵が正常に行われていれば、妊娠の妨げにならないことがほとんどです。

ただし、チョコレート嚢胞などは不妊の原因になることがあるため、主治医に相談し、妊娠に向けた方針を確認することが重要です。

Q2.妊娠中に茎捻転が起きたらどのような症状が出ますか?

突然の激しい下腹部痛が最も特徴的な症状です。
痛みは我慢できないほど強く、持続します。
吐き気や嘔吐、冷や汗を伴うことも少なくありません。

このような症状が急に現れた場合は、茎捻転の可能性があるため、時間を問わずすぐに医療機関を受診してください。

Q3.卵巣嚢腫の手術と帝王切開を同時に行うことはできますか?

はい、可能です。
予定帝王切開の場合、赤ちゃんを取り出した後に、そのまま卵巣嚢腫を摘出する手術を同時に行うことがあります。
これにより、一度の麻酔と入院で両方の処置を終えられます。

ただし、出血量が増えるリスクなどを考慮し、母体の安全を最優先して医師が慎重に判断します。

まとめ

卵巣嚢腫は多くの女性に起こりうる病気であり、その多くは良性で、妊娠・出産も可能です。
しかし、種類や大きさによっては不妊の原因になったり、妊娠中に合併症を引き起こしたりするリスクも伴います。
卵巣嚢腫の診断を受けた場合や、妊娠中に指摘された場合は、過度に不安にならず、まずは産婦人科の専門医に相談することが重要です。

定期的な検診を受け、自身の状態を正確に把握し、医師と相談しながら最適な方針を選択してください。

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この記事の監修者

監修者の写真

藤鬼 千子

住吉鍼灸院総院長

東洋鍼灸専門学校卒業後、2011年4月に住吉鍼灸院に入社し、9年間住吉鍼灸院院長として従事。
現在は総院長として妊娠を望むすべてのご夫婦に貢献している。

《資格》

はり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師、不妊カウンセラー

《経歴》

東洋鍼灸専門学校 卒業
住吉鍼灸院 院長就任
住吉鍼灸院 総院長就任

《所属》

日本不妊カウンセリング学会会員

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