着床前診断(PGT-A)は、2024年現在、原則として公的医療保険の適用外です。
そのため、検査にかかる費用は全額自己負担となります。
しかし、反復着床不全や不育症といった特定の条件を満たす場合には、費用負担を軽減できる「先進医療」として実施することが可能です。
この記事では、着床前診断が保険適用外である理由や、先進医療の具体的な仕組み、そして今後の保険適用の見通しについて解説します。
着床前診断(PGT-A)は保険適用される?まずは現状を正しく理解しよう
2022年4月から多くの不妊治療が保険適用の対象となりましたが、着床前診断(PGT-A)はそこに含まれず、現在も保険適用外という状況が続いています。
そのため、この検査を受ける場合は、基本的にすべての費用が自己負担となるのが原則です。
なぜ着床前診断が保険の対象外とされたのか、その背景を理解することが、今後の治療方針を検討するうえで重要になります。
結論:2024年現在、着床前診断は原則として保険適用外
2024年時点において、受精卵の染色体数を調べる着床前診断(PGT-A)は、公的医療保険が使えない保険適用外の検査です。
したがって、この検査を選択した場合、その費用は全額を自己で負担する必要があります。
体外受精などの基本的な治療とあわせて実施すると、治療費の総額が高額になる傾向があります。
ただし、特定の条件を満たすカップルについては、後述する「先進医療」という制度を活用することで、費用負担を一部軽減しながら検査を受ける道が開かれています。
なぜ保険適用外?2022年の不妊治療保険適用で見送られた2つの理由
2022年の不妊治療への保険適用拡大の際に着床前診断が見送られた主な理由は2つあります。
一つ目は、検査の有効性を示す科学的根拠がまだ十分ではないと判断された点です。
着床前診断が妊娠率や出産率の向上に確実につながるというデータが、保険適用を決定する段階では不足していました。
二つ目は、「命の選別」につながるのではないかという倫理的な課題です。
受精卵の段階で選別を行うことへの社会的なコンセンサスが十分に形成されていないことも、慎重な判断につながった要因です。
費用負担を軽減する選択肢「先進医療」としての着床前診断
現在、着床前診断は保険適用外ですが、費用負担を抑えながら受ける方法として「先進医療」という制度があります。
この制度を利用すると、保険が適用される体外受精などの治療と、保険外である着床前診断を組み合わせて行うことが認められます。
これにより、検査費用そのものは自己負担となりますが、基本的な治療部分は保険診療となるため、全額を自費で支払う場合に比べて総額の費用を軽減できる可能性があります。
先進医療Bとは?保険診療と組み合わせて自己負担を抑える仕組み
先進医療とは、公的医療保険の対象にするかを評価する段階にある先進的な医療技術のことです。
着床前診断は、その中でも特に慎重な評価が求められる「先進医療B」に分類されています。
この制度では、先進医療である着床前診断の技術料は全額自己負担となりますが、並行して行われる診察や検査、採卵、胚移植といった基本的な不妊治療には保険が適用され、自己負担は3割で済みます。
このように、保険診療と自費診療を併用できるため、治療全体にかかる金銭的な負担を軽減できる仕組みになっています。
いつから開始?先進医療Bとして承認された時期
着床前診断(PGT-A)は、日本産科婦人科学会が主導する臨床研究として実績を重ねた後、2023年3月3日の厚生労働省の先進医療会議での了承を経て、先進医療Bとして正式に承認されました。これは、不妊治療が広く保険適用されるようになった時期とは異なります。
この承認により、それまでは研究として一部の医療機関でしか実施できなかったものが、国の制度下で、より多くの認定施設において保険診療と組み合わせて行えるようになりました。これにより、対象となる患者が費用負担を抑えつつ検査を受けられる道が拓かれました。
先進医療の対象となる人の具体的な条件
先進医療として着床前診断を受けるためには、体外受精を行う方のうち、特定の条件を満たす必要があります。
主な対象者は、過去の治療において2回以上連続して良好な受精卵を移植したにもかかわらず妊娠に至らなかった「反復着床不全」の方です。
また、これまでに2回以上の流産を経験した「反復流産(不育症)」の方も対象となります。
これらの条件は、染色体異常が不妊や不育の原因である可能性が高いと考えられるため設定されています。
詳細は実施する医療機関によって異なる場合があるため、直接確認することが重要です。
先進医療で着床前診断を受けた場合の費用目安
先進医療制度を利用して着床前診断を受ける場合、検査費用そのものは全額自己負担となります。
この費用は医療機関や検査する胚の数によって異なりますが、一般的には数十万円程度が目安です。
例えば、胚1個あたり5万円から10万円ほどの費用がかかり、複数個検査すると総額は大きくなります。
これに加えて、保険適用となる採卵や培養、胚移植などの治療費(3割負担分)が別途発生します。
全額自費で治療を受ける場合に比べれば費用は抑えられますが、それでも高額な支払いが必要となることを理解しておく必要があります。
今後の見通し:着床前診断が本格的に保険適用されるのはいつから?
着床前診断は、その将来的な費用負担について多くの人が関心を寄せる点です。現在、先進医療として有効性や安全性を評価するためのデータが収集されており、この結果が今後の判断を大きく左右します。現状では保険適用外ですが、学会からは対象者拡大の提言も出されるなど、本格的な保険適用に向けた動きも見られます。一部の自治体では先進医療に対する助成制度があり、自己負担額が軽減されるケースもあります。
ここでは、最新の動向と今後のロードマップについて解説します。
最新動向:2025年9月の学会提言による対象者拡大の動き
着床前診断の対象者については、日本産科婦人科学会で見直しが進められています。
特に2025年9月には、従来の反復着床不全や不育症の既往歴がないカップルでも、女性の年齢が高い(例:35歳以上)ことを理由に体外受精を受ける場合も対象に含めるべきだという提言がなされました。
これは、年齢の上昇に伴い受精卵の染色体異常のリスクが高まるという医学的知見に基づくものです。
この提言が国の審議を経て認められれば、将来的に先進医療や保険適用の対象範囲が拡大し、より多くの方がこの検査を選択できる可能性があります。
本格的な保険適用(3割負担)に向けた今後のロードマップ
着床前診断が本格的に保険適用となるまでには、いくつかの段階を踏む必要があります。
まず最も重要なのが、現在進行中の先進医療としての臨床研究で、この検査が出産率の向上に有効であるという科学的根拠を明確に示すことです。
そのデータが十分に集まった後、厚生労働省の中央社会保険医療協議会(中医協)で、費用対効果なども含めて保険収載の可否が審議されます。
ここで承認されれば、正式に診療報酬が設定され、全国の医療機関で3割負担での実施が開始されます。
具体的な時期は未定ですが、研究の進捗次第では数年以内に議論が本格化すると期待されています。
着床前診断の保険適用に関するよくある質問
着床前診断の保険適用を考えるにあたり、多くの方がさまざまな疑問を抱いています。
ここでは、費用や病院の探し方といった実用的な情報から、この検査が持つ倫理的な側面まで、特によく寄せられる質問をQ&A形式で取り上げます。
これらの回答を通じて、制度への理解を深め、ご自身の治療計画を立てる際の参考にしてください。
Q1. 着床前診断はなぜ「命の選別」という倫理的な指摘があるのですか?
染色体の数に異常がない胚を選んで移植する行為が、特定の基準で命を選別していると見なされるためです。
この検査によって移植の対象とならない胚が生じることや、障がいを持つ可能性のある命を排除することにつながるという懸念から、倫理的な議論が続いています。
Q2. 先進医療として着床前診断を受けられるクリニックはどうやって探せますか?
厚生労働省のウェブサイトで公開されている「先進医療を実施している医療機関の一覧」から検索できます。
この一覧で「着床前診断」に関連する技術名で検索すると、対象の病院がわかります。
また、日本産科婦人科学会のウェブサイトで、臨床研究の認定施設リストを確認する方法もあります。
Q3. 将来、保険適用になった場合、費用は本当に3割負担になるのでしょうか?
はい、公的医療保険が適用されれば、原則として窓口での支払いはかかった費用の3割負担になります。
ただし、検査1回あたりに設定される診療報酬の点数によって自己負担額は変わります。
また、月の医療費が高額になった場合は、高額療養費制度の対象となる可能性があります。
まとめ
2024年現在、着床前診断は原則として保険適用外であり、費用は自己負担となります。
しかし、反復着床不全や不育症などの条件を満たす方は、保険診療と併用できる「先進医療」の制度を利用して費用負担を軽減することが可能です。
本格的な保険適用については、先進医療としての有効性評価の結果を踏まえて今後議論される見込みです。
治療を検討する際は、最新の情報を確認し、医療機関に相談のうえで自身の状況に合った選択をすることが重要です。









