子宮後屈のセルフチェック方法|原因や症状、不妊との関係も解説

公開日:2025/12/03 

更新日:2025/12/03

重い生理痛や腰痛といった不調の原因が、子宮後屈によるものではないかと考えている方もいるかもしれません。
子宮後屈は病気ではありませんが、不快な症状を引き起こすことがあります。
この記事では、自分でわかる子宮後屈のセルフチェックリストや、その原因、主な症状、そして妊娠への影響について解説します。

セルフチェックはあくまで目安であり、医学的な判断に代わるものではありませんが、自身の体の状態を把握し、必要に応じて医療機関に相談するきっかけとして役立ちます。

まずは自分の状態を確認!子宮後屈のセルフチェックリスト

医療機関での正確な診断が前提となりますが、自身の体の状態を知るために、いくつかの項目をセルフチェックすることができます。
例えば、「生理痛がひどく、市販の鎮痛剤が効きにくい」「仰向けで寝ると腰が痛い、または違和感がある」「性交時に奥の方が痛むことがある」「慢性的な便秘や頻尿に悩んでいる」といった項目に複数当てはまる場合、子宮後屈の可能性があります。

また、清潔な指を腟に入れ、子宮口が前方を向いている感覚があれば後屈の可能性がありますが、この方法は衛生的リスクを伴うため慎重に行う必要があります。

そもそも子宮後屈とは?子宮が後ろに傾いている状態のこと

子宮後屈とは、通常は前方(お腹側)に傾いている子宮が、後方(背中側)に傾いている状態を指します。
これは病気ではなく、体質的な個性の一つとして捉えられることがほとんどです。

日本人女性の約2〜3割が子宮後屈であるといわれており、多くの場合無症状で日常生活に支障はありません。
しかし、人によっては生理痛や腰痛、性交痛などの症状の原因となることもあります。
正確な子宮の位置は、婦人科での内診や超音波(エコー)検査といった診察によって確定的な診断がなされます。

多くの女性が該当する子宮前屈との位置の違い

大多数の女性の子宮は、骨盤内でお腹側、つまり膀胱の方向に少し傾いており、この状態を「子宮前屈」と呼びます。
これは最も一般的な子宮の位置です。
これに対して「子宮後屈」は、子宮が体の後方、つまり直腸の方向に倒れている状態を指します。

子宮は完全に固定された臓器ではなく、靭帯によって骨盤内に支えられているため、その傾きには個人差があります。
前屈と後屈は単に子宮の傾きの方向が違うだけであり、後屈だからといって直ちに異常というわけではありません。
婦人科での超音波検査などによって、自分の子宮がどちらの向きに傾いているかを確認することができます。

子宮後屈は病気ではない?基本的な考え方

子宮後屈は、それ自体が病気として扱われることは基本的にありません。
多くの場合、個人の体質的な特徴の一つと解釈されます。
全女性のうち約20%が子宮後屈であるとされ、その大半は特に自覚症状もなく過ごしています。
そのため、検診などで指摘されても、症状がなければ過度に心配する必要はありません。

しかし、子宮が後方に傾くことで、骨盤内の血管や神経が圧迫されたり、月経血の排出が滞ったりすることがあります。
その結果、生理の際に下腹部が強く痛いと感じたり、慢性的な腰痛や背中の痛みを引き起こしたりする人もいます。
症状が生活に影響を与える場合は、他の疾患が関連している可能性もあるため、一度専門医に相談することが望ましいです。

子宮後屈によって起こりやすい症状とは?

子宮後屈の多くは無症状で経過しますが、一部の人には特有の症状が現れることがあります。
代表的な症状としては、経血がスムーズに排出されにくいことによる重い生理痛、骨盤周りの靭帯が引っ張られることによる慢性的な腰痛、そして性交時に子宮の入り口が刺激されることによる性交痛が挙げられます。

また、子宮が直腸や膀胱を圧迫することで、便秘や頻尿といった排便・排尿トラブルを招くこともあります。
これらの症状は、子宮筋腫や子宮内膜症、あるいは骨盤臓器脱(子宮脱など)といった他の婦人科疾患でも見られるため、自己判断は禁物です。

ほとんどの場合は無症状だが注意したいサイン

子宮後屈を持つ人の多くは、これといった自覚症状がないまま日常生活を送っています。
そのため、婦人科検診などで偶然指摘されて初めて自身の状態を知るケースも少なくありません。
しかし、中には注意しておきたいサインも存在します。
例えば、仰向けで寝ると腰が反ってしまい、床との間に隙間ができて違和感を覚えることがあります。

これは、後屈した子宮が骨盤内の靭帯を引っ張り、骨盤が前傾することで反り腰の姿勢になりやすいためと考えられます。
また、生理の際に経血がうまく排出されず、レバー状の塊が多くなったり、月経期間が長引いたりする傾向が見られる場合もあります。
これらのサインが気になるときは、一度婦人科で相談してみることをお勧めします。

生理痛が重くなる月経困難症や腰痛

子宮後屈の場合、子宮の出口が通常より狭い角度になるため、月経血がスムーズに排出されにくくなる傾向があります。
子宮は内部の経血を排出しようと通常より強く収縮する必要があり、これが激しい下腹部痛、いわゆる月経困難症の原因となることがあります。
また、子宮を後ろから支えている仙骨子宮靭帯が常に緊張した状態になりやすく、これが慢性的な腰痛を引き起こす一因と考えられています。

特に生理中は子宮の収縮も加わるため、腰の痛みが強くなる人が多いです。
出産を経験すると子宮の位置が変わり、後屈が改善されて症状が和らぐこともあります。
一方で、癒着が原因の場合、2人目の妊娠を考える際にも症状が継続する可能性があります。

性交時に痛みを感じることがある(性交痛)

子宮が後方に傾いていると、性交時にペニスが子宮の入り口である子宮頸部に直接当たりやすくなり、奥の方に鈍い痛みや圧迫感(性交痛)を感じることがあります。
特に、女性が仰向けになるなど、体位によっては痛みが出やすい傾向があります。
この痛みは、子宮後屈そのものが原因である場合もありますが、子宮内膜症や骨盤内の炎症による癒着が起きていて、子宮の可動性が失われている場合に、より強く感じられることが多いです。

痛みを緩和するためには、女性が主導権を握れる体位や、子宮への圧迫が少ない体位を試すことが有効です。
骨盤周りの血行を改善するストレッチなども、間接的に症状の緩和に役立つことがあります。

便秘や下痢、排尿トラブルを引き起こすことも

子宮は骨盤の中で直腸の前に位置しているため、子宮が後屈すると直腸を内側から圧迫することがあります。
この圧迫によって便の通過が妨げられ、慢性的な便秘の原因となる場合があります。
特に生理前後は子宮が大きくなるため、症状が悪化しやすいです。

逆に、子宮からの刺激が腸に伝わって下痢を引き起こすこともあります。
また、後屈した子宮の形状によっては、前方にある膀胱を圧迫し、頻尿や残尿感といった排尿に関するトラブルを招くことも考えられます。
これらの症状は他の疾患の可能性も否定できないため、長く続く場合は婦人科を受診し、内診や超音波検査などで原因を調べてもらうことが重要です。

子宮後屈になってしまう主な原因

子宮後屈になる原因は、大きく二つに分けられます。
一つは、生まれつきの体質による「先天性」のケースです。
これは病的なものではなく、個人の身体的な特徴の一つと捉えられます。
もう一つは、もともと正常な位置にあった子宮が、何らかの理由で後方に傾いてしまう「後天性」のケースです。

後天性の原因としては、子宮内膜症や骨盤内炎症性疾患、開腹手術などによる骨盤内の癒着、あるいは子宮筋腫の発生などが挙げられます。
後天性の場合は、原因となっている疾患の治療が必要となることがあります。

生まれつきの体質による先天的なケース

子宮後屈の原因として最も多いのは、生まれつきの体質によるものです。
これは先天性子宮後屈と呼ばれ、病気や異常ではなく、個人の身体的特徴の一つとして考えられています。
この場合、子宮そのものは柔らかく、骨盤内で動きやすい状態にあるため、「可動性子宮後屈」とも称されます。

特に臓器同士の癒着などがないため、多くは無症状か、症状があっても軽度です。
そのため、婦人科検診などで偶然指摘されて、初めて自分の子宮が後屈であることを知る人も少なくありません。
また、このタイプの後屈は、妊娠して子宮が大きくなるにつれて自然に前屈の位置に戻ることが多く、出産後にそのまま前屈の状態が維持されることもあります。

子宮内膜症や子宮筋腫が引き起こす後天的なケース

もともとは正常な前屈の位置にあった子宮が、後天的な要因によって後方に傾き、固定されてしまうことがあります。
その主な原因として挙げられるのが、子宮内膜症や子宮筋腫、あるいはクラミジア感染などによる骨盤内炎症性疾患です。
例えば、子宮内膜症が進行すると、子宮と直腸などが癒着を起こし、子宮が後方へ強く引っ張られて動かなくなってしまいます。
これを「固定性子宮後屈」と呼びます。

同様に、子宮の後壁に大きな筋腫ができた場合や、骨盤内の炎症が癒着を引き起こした場合も、子宮が後方に固定される原因となります。
後天的な子宮後屈は、強い生理痛や不妊の原因となることがあるため、背景にある疾患の診断と治療が重要になります。

子宮後屈は妊娠しにくい?不妊や出産への影響について

子宮後屈と診断されると、妊娠や出産に影響があるのではないかと不安に感じるかもしれません。
しかし、結論から言うと、子宮後屈そのものが不妊の直接的な原因になることは基本的にないと考えられています。

ただし、子宮内膜症などによる癒着が原因で後屈になっている場合は、妊娠の妨げになる可能性が指摘されています。
ここでは、子宮後屈が不妊や妊娠中の経過、出産にどのような影響を及ぼす可能性があるのかを具体的に解説します。

基本的に子宮後屈自体が不妊の直接的な原因にはならない

子宮後屈であるというだけで、妊娠しにくくなるわけではありません。
精子が子宮内に進入するのを子宮の傾きが妨げることはなく、受精や着床のプロセスにも影響しないと考えられています。
実際に、子宮後屈の女性も問題なく自然妊娠し、出産に至るケースがほとんどです。
そのため、婦人科検診で子宮後屈を指摘されたとしても、それ自体を不妊の原因として過度に心配する必要はないでしょう。

ただし、性交痛がひどいために性交の機会が減ってしまう場合は、結果的に妊娠しにくくなるという間接的な影響は考えられます。
あくまで子宮の位置の個人差であり、妊娠の機能に直接関わるものではないと理解しておくことが大切です。

癒着がみられる場合は妊娠に影響する可能性も

子宮後屈自体は不妊の直接原因にはなりませんが、子宮内膜症や骨盤内の炎症が原因で後屈になっている場合は、妊娠に影響が出ることがあります。
これらの疾患は、子宮だけでなく、卵管や卵巣といった周囲の臓器との間で癒着を引き起こす可能性があるためです。

例えば、卵管が周囲の組織と癒着して動きが悪くなったり、塞がってしまったりすると、卵子がうまく卵管内に取り込まれない、あるいは精子と出会えないといった状況が生じ、不妊の原因となります。
このように、子宮後屈を引き起こしている背景にある「癒着」が、妊娠を妨げる要因になることは少なくありません。
不妊に悩んでいる場合は、子宮後屈の有無だけでなく、癒着の原因となる疾患がないかを調べることが重要です。

妊娠中の経過や出産への影響はあるの?

癒着のない可動性の子宮後屈の場合、妊娠後の経過や出産への影響はほとんどありません。
多くの場合、妊娠12週から14週頃までに子宮が骨盤よりも大きく成長することで、自然に前屈の位置へと矯正されるためです。

しかし、非常に稀なケースとして、癒着によって子宮が後屈のまま骨盤内に固定され、大きくなる過程で抜け出せなくなる「嵌頓(かんとん)子宮」という状態に陥ることがあります。
この場合、激しい腹痛や排尿障害を引き起こすため、速やかな処置が必要です。
出産方法に関しては、子宮後屈が帝王切開の理由になることはなく、ほとんどの人が経腟分娩をしています。
妊娠中の経過で気になることがあれば、かかりつけの産婦人科医に相談してください。

子宮後屈によるつらい症状を和らげるセルフケア方法

子宮後屈に起因する生理痛や腰痛、下腹部の不快感といった症状は、日常生活における工夫で緩和が期待できる場合があります。
子宮後屈自体は多くの場合病気ではありませんが、これらの症状が子宮内膜症や骨盤内炎症性疾患など、他の病気によって引き起こされている可能性も考慮し、症状がある場合は医療機関での確認が重要です。

ここでは、自宅で手軽に試せる姿勢の工夫や、骨盤周りの緊張をほぐすストレッチなどを紹介します。
ただし、これらの方法はあくまで症状を一時的に和らげるためのものであり、痛みが強い場合や症状が改善しない場合は、自己判断せず婦人科を受診することが不可欠です。

うつ伏せ寝や四つん這いのポーズを試してみる

子宮後屈による腰痛や生理痛の緩和には、うつ伏せの姿勢が効果的な場合があります。
うつ伏せになることで、重力によって子宮がお腹側に移動しやすくなり、後屈の状態が一時的に改善されるためです。
これにより、骨盤内の血管や神経への圧迫が軽減され、痛みが和らぐことが期待できます。
就寝時にうつ伏せで寝る、あるいは日中にクッションなどを使ってうつ伏せでリラックスする時間を作るのがおすすめです。

また、ヨガのポーズにもある「四つん這い」の姿勢も有効です。
床に手と膝をついてお腹の力を抜き、背中をまっすぐに保つことで、子宮が前方に下がりやすくなり、骨盤内の血流改善にもつながります。
特に生理痛が辛い時に試すと良いでしょう。

骨盤周りの緊張をほぐすストレッチや体操

子宮後屈による不快な症状は、骨盤周りの筋肉の緊張や血行不良が関係していることがあります。
そのため、骨盤周辺の筋肉を柔軟にし、血流を促進するストレッチや軽い体操が症状緩和に役立ちます。
例えば、仰向けに寝て両膝を胸に引き寄せ、ゆっくりと抱えるポーズは、腰回りの筋肉を優しく伸ばすのに効果的です。

また、あぐらの姿勢で座り、両足の裏を合わせて股関節をゆっくりと開いていくストレッチは、骨盤内のうっ血改善に繋がります。
無理のない範囲でウォーキングなどの有酸素運動を取り入れることも、全身の血行を良くし、症状の軽減に有効です。
痛みが強い時は避け、気持ち良いと感じる範囲で継続することが重要です。

症状が気になる場合は婦人科の受診を検討しよう

紹介したようなセルフケアを試しても症状が改善しない、あるいは生理痛や性交痛がひどく日常生活に支障が出ている場合は、我慢せずに婦人科を受診してください。
強い症状の背景には、子宮後屈だけでなく、治療が必要な子宮内膜症や子宮筋腫といった疾患が隠れている可能性もあります。

婦人科では、内診や超音波検査によって子宮の位置や大きさ、癒着の有無などを正確に診断することが可能です。
その上で、症状を緩和するための鎮痛剤や、ホルモンバランスを整える低用量ピルなどの薬物療法、場合によっては手術といった選択肢が検討されます。
自己判断で放置せず、専門医に相談することで、つらい症状に対する適切な対処法が見つかります。

まとめ

子宮後屈は、子宮が後方に傾いた状態で、多くは病気ではなく体質的な個性とされます。
セルフチェックで当てはまる項目があっても、確定診断には婦人科での検査が必要です。
原因は先天的なものが多いですが、子宮内膜症などによる後天的なケースもあります。
多くは無症状ですが、重い生理痛や腰痛、性交痛、便秘などの症状を伴うこともあります。

子宮後屈自体が不妊の直接的な原因になることは稀ですが、癒着を伴う場合は妊娠に影響を及ぼす可能性があります。
つらい症状には、うつ伏せや四つん這いのポーズ、骨盤周りのストレッチなどのセルフケアが有効な場合がありますが、症状が重い、または改善しない場合は、他の疾患も考えられるため婦人科の受診が推奨されます。

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この記事の監修者

監修者の写真

藤鬼 千子

住吉鍼灸院総院長

東洋鍼灸専門学校卒業後、2011年4月に住吉鍼灸院に入社し、9年間住吉鍼灸院院長として従事。
現在は総院長として妊娠を望むすべてのご夫婦に貢献している。

《資格》

はり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師、不妊カウンセラー

《経歴》

東洋鍼灸専門学校 卒業
住吉鍼灸院 院長就任
住吉鍼灸院 総院長就任

《所属》

日本不妊カウンセリング学会会員

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