妊娠がわかってから葉酸を飲み始めた、あるいは妊娠初期に葉酸を飲まなかったことで、赤ちゃんへの影響を心配している方もいるかもしれません。
葉酸は妊娠初期に特に重要な栄養素ですが、妊娠に気づいてから摂取を始めても決して遅くはありません。
この記事では、葉酸を飲むのが遅れた場合に考えられることや、妊娠中期以降も摂取が推奨される理由、そして今後の適切な摂取方法について解説します。
不安を解消し、前向きな気持ちで過ごすための一助となれば幸いです。
妊娠に気づいてから葉酸を飲み始めても遅くない理由
妊娠に気づくのが妊娠5〜6週頃というケースは少なくありません。
赤ちゃんの重要な器官が形成される時期に葉酸を飲まなかったと不安になるかもしれませんが、気づいた時点から摂取を始めることが非常に重要です。
葉酸は妊娠初期だけでなく、妊娠全期間を通じて赤ちゃんの成長とお母さんの健康維持に欠かせない栄養素だからです。
例えば、細胞分裂が活発な胎児の発育をサポートしたり、お母さんの造血機能を助けたりする働きがあります。
そのため、摂取が遅れたと悔やむよりも、今からしっかり必要な量を摂取していくことに意識を向けましょう。
妊娠初期に葉酸を飲まなかった場合に考えられる2つのリスク
葉酸は、赤ちゃんの健やかな成長とお母さんの健康を守るために不可欠な栄養素です。
特に妊娠超初期から初期にかけては、胎児の重要な器官が形成される大切な時期にあたります。
この時期に葉酸を飲まなかった場合、赤ちゃんの発育や母体の健康状態に影響を及ぼす可能性が指摘されています。
具体的には、赤ちゃんの先天性異常のリスク増加や、お母さん自身の体調不良につながるおそれがあるため、葉酸の重要性を正しく理解しておくことが求められます。
赤ちゃんの神経管閉鎖障害の発症リスクが高まる
葉酸は、赤ちゃんの脳や脊髄などの中枢神経系のもとになる「神経管」を形成する上で、極めて重要な役割を担っています。
この神経管は、受胎後28日ごろ、つまり妊娠4週から6週末ごろまでに作られます。
この大切な時期に母体の葉酸が不足していると、神経管が正常に閉じず、「神経管閉鎖障害」という先天性異常の発症リスクが高まることがわかっています。
妊娠初期に葉酸を飲まなかったからといって必ずしも発症するわけではありませんが、リスクを低減するためには妊娠前から妊娠初期にかけての葉酸摂取が推奨されています。
この情報を知ると不安になるかもしれませんが、まずは現状を理解することが大切です。
貧血や妊娠高血圧症候群などお母さんの不調につながることも
葉酸の役割は、赤ちゃんの発育をサポートするだけにとどまりません。
お母さん自身の健康維持にも深く関わっています。
葉酸はビタミンB12とともに赤血球を作り出す「造血作用」を担っており、不足すると悪性貧血の一種である「葉酸欠乏性貧血」を引き起こす原因となります。
妊娠中は赤ちゃんに優先的に栄養が送られるため、お母さんは貧血になりやすい状態です。
また、葉酸は動脈硬化の危険因子である「ホモシステイン」の血中濃度を正常に保つ働きもあります。
妊娠初期に葉酸を飲まなかった場合、これらの作用が十分に得られず、母体の不調や妊娠高血圧症候群などのリスクにつながる可能性があります。
妊娠中期や後期からでも葉酸の摂取を推奨する理由
葉酸は妊娠初期に飲むものというイメージが強いかもしれませんが、その重要性は妊娠中期や後期、さらには産後授乳期まで続きます。
妊娠初期に葉酸を飲まなかったとしても、気づいた時点から摂取を再開継続することで、赤ちゃんの成長やお母さんの体に多くの良い影響が期待できます。
細胞分裂が盛んに行われる胎児の継続的な発育を支え、出産や育児に備えるお母さんの体調を整えるためにも、葉酸は妊娠全期間を通じて必要な栄養素なのです。
胎児の継続的な成長と発育をサポートするため
葉酸は、細胞が新しく作られる際のDNA合成に不可欠な栄養素です。
妊娠中期から後期にかけて、赤ちゃんは手足や内臓などが完成し、皮下脂肪がついて大きく成長していきます。
この時期は細胞分裂が非常に活発に行われるため、葉酸の必要量も依然として高いままです。
妊娠初期に葉酸を飲まなかったとしても、この時期に十分な葉酸を摂取することは、赤ちゃんの継続的な成長と発育をサポートし、体の隅々まで健やかに育むために重要です。
胎盤を通じて赤ちゃんに栄養を届けるためにも、お母さんの体内の葉酸濃度を適切に保つことが求められます。
産後の母体の回復を助ける役割も担うため
葉酸の働きは妊娠中だけでなく、出産後の母体の回復期においても重要です。
出産では多くの血液が失われるため、産後は貧血になりやすくなります。
葉酸には赤血球の生産を助ける造血作用があるため、産後の貧血を予防し、体力の回復をサポートする効果が期待できます。
また、葉酸は母乳の生成にも関わっているとされ、質の良い母乳を赤ちゃんに届けるためにも欠かせません。
妊娠初期に葉酸を飲まなかったとしても、授乳期まで継続して摂取することで、お母さん自身の体をケアし、元気に育児に臨むための土台作りにつながります。
これから葉酸を始める人が知っておきたい摂取量の目安
葉酸を飲むのが遅れたと感じている場合でも、大切なのはこれから適切な量を継続して摂取することです。
厚生労働省は、妊娠の可能性がある女性や妊娠中の女性に対し、通常の食事に加えてサプリメントなどから特定の量の葉酸を摂取することを推奨しています。
妊娠初期に葉酸を飲まなかったとしても、気づいた時点から時期に応じた摂取量を守ることで、赤ちゃんの健やかな発育と母体の健康維持に貢献できます。
ここでは、妊娠中期から授乳期にかけての具体的な摂取量について解説します。
妊娠中期から授乳期までに必要な1日の摂取量
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、妊娠中期(14週〜)および後期(28週〜)の女性は、通常の食事で摂取する240μgに加えて、サプリメントなどから400μgの葉酸を摂取することが推奨されており、1日の合計摂取推奨量は640μgです。 また、出産後の授乳期においては、通常の食事240μgに加え、付加的に100μgの摂取が推奨されており、合計で340μgとなります。
妊娠初期に葉酸を摂取できなかった場合でも、妊娠中期以降からこれらの推奨量を参考に摂取を始めることで、胎児の成長や産後の回復をサポートすることが可能です。
葉酸を飲むのが遅れたことに関するよくある質問
妊娠初期に葉酸を飲まなかったことに気づくと、様々な疑問や不安が浮かんでくるかもしれません。
つわりでサプリメントが飲めない時や、うっかり飲み忘れてしまった時の対処法、いつまで摂取を続けるべきかなど、具体的な悩みは尽きないものです。
また、葉酸サプリメントの安全性に関する情報に戸惑うこともあるかもしれません。
ここでは、葉酸の摂取に関して多くの方が抱く質問に答え、安心して摂取を続けていくための情報を提供します。
つわりがひどくて葉酸サプリが飲めない時はどうすればいい?
つわりがひどい時期に、無理をしてサプリメントを飲む必要はありません。
体調が少しでも良い時間帯を探して飲んだり、食事と一緒に摂取したりする工夫が考えられます。
サプリメントの味や匂いが気になる場合は、無味無臭のタイプや小粒のもの、あるいは水なしで飲めるチュアブルやグミタイプなどを試すのも一つの方法です。
どうしてもサプリメントの摂取が難しい場合は、一時的に中断し、つわりが落ち着いてから再開しても問題ありません。
妊娠初期に葉酸を飲まなかったからと焦るのではなく、まずはご自身の体調を最優先に考え、できる範囲で対処することが重要です。
サプリを1日飲み忘れたら、翌日にまとめて飲んでもいい?
葉酸サプリを1日飲み忘れたからといって、翌日に2日分をまとめて摂取することは避けてください。
葉酸は水溶性ビタミンの一種であり、一度に大量に摂取しても、体内に吸収されなかった分は尿として排出されてしまいます。
そのため、まとめて飲んでも効果が高まるわけではありません。
むしろ、サプリメントなどに含まれる合成葉酸には耐容上限量(1日あたり900〜1,000μg)が定められており、過剰摂取は避けるべきです。
飲み忘れた分は気にせずに、翌日からまた通常の1日分の量を再開し、毎日継続して飲むことを心がけましょう。
葉酸はいつまで飲み続けるのがおすすめ?
葉酸の摂取は、妊娠初期だけでなく、妊娠全期間を通じて、さらには出産後の授乳期まで継続することが推奨されています。
妊娠中期・後期は胎児の継続的な成長を支えるために、授乳期は母乳を通じて赤ちゃんに栄養を届け、お母さん自身の産後の回復を助けるために葉酸が必要です。
特に、母乳は血液から作られるため、造血作用のある葉酸は授乳期の貧血予防にも役立ちます。
妊娠初期に葉酸を飲まなかった場合でも、授乳が終わるタイミングまで長く摂取を続けることで、母子ともに多くのメリットが期待できます。
葉酸サプリは体に悪いという噂は本当?
葉酸サプリが体に悪いという情報は、過剰摂取した場合のリスクを指していることがほとんどです。
厚生労働省が定める推奨量を守って摂取している限り、葉酸サプリが母体や胎児に悪影響を及ぼすという科学的根拠はありません。
注意すべきなのは、サプリメントに含まれる合成葉酸(モノグルタミン酸型葉酸)の過剰摂取です。
1日の耐容上限量である900〜1,000μgを超えないように、製品に記載された用量を守ることが重要です。
妊娠初期に葉酸を飲まなかったことへの不安から自己判断で量を増やすことはせず、適切に利用すれば安全で有益なものです。
まとめ
妊娠初期に葉酸を飲まなかったと気づいても、過度に心配する必要はありません。
最も重要なのは、気づいた時点から摂取を開始し、継続することです。
葉酸は妊娠初期の神経管形成だけでなく、妊娠中期以降の胎児の成長、さらには産後の母体の回復や授乳のためにも不可欠な栄養素です。
時期に応じた適切な摂取量を守り、つわりなどで摂取が難しい場合は無理せず、体調に合わせて工夫しましょう。
不安な点はかかりつけの医師に相談しながら、前向きな気持ちで栄養摂取を続けていくことが大切です。







