経産婦は妊娠しやすいと聞いたことがあるかもしれません。
一度出産を経験した体は、妊娠に適した状態に変化していることが多く、実際に経産婦の方が妊娠しやすいとされる医学的な理由も存在します。
この記事では、経産婦が妊娠しやすいとされる理由や体の変化について解説するとともに、二人目不妊の原因や、妊娠の確率を高めるための対策についても紹介します。
そもそも経産婦とは?初産婦との言葉の意味の違い
経産婦とは、妊娠22週以降に出産した経験がある女性を指す言葉です。
一方で、出産経験がない女性や、妊娠22週未満で出産(流産・死産)した経験のある女性は初産婦(または未産婦)に分類されます。
この二つの言葉の違いは、単純に出産経験の有無によるものです。
医学的には、子宮口の形状で経産婦と初産婦の見分けがつくことがあります。
出産を経験した経産婦の子宮口は、横に広がった形(横スリット状)になるのに対し、初産婦の子宮口は丸い形(円状)をしています。
このため内診によって見分けることが可能ですが、外見からその違いを見分けることはできません。
経産婦が妊娠しやすいと言われる4つの医学的理由
一度出産を経験した経産婦は、初産婦に比べて妊娠しやすい傾向があると言われています。
これには、出産によって母体が変化することや、一度経験していることによる精神的な要因が関係しています。
経産婦の妊娠しやすさには、単なる俗説ではなく、いくつかの医学的な根拠が存在しており、身体的・精神的な両面から、次の妊娠に向けた準備が整いやすい状態にあると考えられます。
出産経験によって子宮や産道が妊娠に適した状態になるため
一度出産を経験すると、子宮や産道が物理的に広がり、次の妊娠に適した状態になります。
妊娠中は胎児を育むために子宮への血流が大幅に増えますが、出産後もその血流が良い状態が維持されやすい傾向にあります。
これにより、受精卵が着床するために必要な子宮内膜が厚く、ふかふかな状態に保たれやすくなります。
また、産道も一度赤ちゃんが通ることで広がり、柔軟性が増しているため、全体として体が妊娠を受け入れやすい環境になっています。
ただし、第一子の出産から期間が空き、高齢での妊娠を目指す場合は、加齢による影響も考慮する必要があります。
一度妊娠した経験が精神的な安心感につながるため
初めての妊娠出産は、多くの女性にとって未知の経験であり、大きな不安やストレスを伴います。
過度なストレスはホルモンバランスの乱れを引き起こし、妊娠の妨げになることがあります。
一方で、経産婦は一度妊娠から出産までの一連の流れを経験しているため、漠然とした不安が少なく、精神的に余裕を持って妊活に臨める場合が多いです。
この精神的な安定やリラックスした状態は、体の機能を正常に保ち、ホルモンバランスを整える上で良い影響を与えます。
心身がリラックスしていることは、妊娠しやすい体づくりにおいて重要な要素の一つです。
妊娠から出産までの流れを把握できているため
経産婦は、一度妊娠から出産までの一連の流れを経験しているため、次に何が起こるか、どのように体調が変化するかをある程度予測できます。
例えば、妊娠初期のつわりのような兆候に早く気づいたり、妊婦健診のスケジュールや内容を理解していたりするため、落ち着いて対応することが可能です。
妊活においても、自身の月経周期や排卵のタイミングなど、体のリズムを把握しやすくなっている場合があります。
このような経験に基づく知識は、先の見通しを立てやすくし、精神的な負担を軽減します。
結果として、心に余裕が生まれ、妊娠しやすい状況を作り出すことにつながります。
ホルモンバランスが妊娠しやすい状態に変化しているため
一度妊娠出産を経験した体は妊娠に必要なホルモン分泌のプロセスを記憶しています
妊娠の成立や維持には卵胞ホルモンエストロゲンや黄体ホルモンプロゲステロンといった女性ホルモンが複雑に関与しますが体が出産の経験を覚えていることでこれらのホルモンがスムーズに分泌されやすい状態になっています
脳下垂体からの指令が的確に伝わり排卵や着床妊娠維持に向けたホルモンバランスが整いやすくなるため初産婦に比べて体が妊娠モードに切り替わりやすいと考えられます
これは体が一度経験したプロセスを効率よく再現しようとする働きによるものです
一度出産を経験した経産婦の体の変化
出産は、女性の体に様々な変化をもたらす大きな出来事です。
特に子宮や骨盤周りには、次の妊娠に良い影響を与える変化が見られます。
一度赤ちゃんを育み、産み出した体は、初産の時とは異なり、妊娠に適した状態へと変化している部分があります。
ここでは、子宮口、子宮への血流、骨盤周りの3つの観点から、経産婦の体に起こる具体的な変化について解説します。
子宮口が柔らかく受精卵が着床しやすい
出産時、赤ちゃんが通るために大きく開いた子宮口は、産後に完全に元の状態に戻るわけではありません。
初産婦の子宮口が硬く閉じているのに対し、経産婦の子宮口は一度伸びているため、比較的柔らかく、少し開いた状態を保つことが多くなります。
形状も、初産婦の点状から横一文字状に変化します。
この変化により、精子が子宮内へ進入しやすくなる可能性があります。
また、子宮頸管全体が柔軟になることで、受精卵が子宮内膜に着床する際にも良い影響を与えると考えられています。
子宮の入り口が柔軟であることは、次の妊娠の成立をサポートする一因です。
子宮への血流が良い状態が保たれている
妊娠中、胎児に酸素や栄養を届けるために、子宮やその周辺の血管は著しく発達し、血流量が大幅に増加します。
一度このように発達した血管網は、出産後もある程度維持されるため、経産婦は子宮への血流が良い状態が保たれやすい傾向にあります。
豊かな血流は、受精卵のベッドとなる子宮内膜を厚く、良質な状態に保つために不可欠です。
栄養が十分に行き渡った子宮内膜は、受精卵が着床しやすく、また着床後も成長しやすい環境を提供します。
この血行の良さが、二人目の妊娠において有利に働く重要な要素となります。
骨盤周りの筋肉や靭帯に柔軟性がある
妊娠後期から出産時にかけて、リラキシンというホルモンの影響で、骨盤の関節をつなぐ靭帯や周辺の筋肉が緩み、赤ちゃんが通りやすいように骨盤が開きます。これは赤ちゃんが安全に産道を通るために必要な生理的な変化です。
出産後、骨盤は時間をかけて元の状態に戻ろうとしますが、一度伸びた靭帯は完全に元通りになることはなく、ある程度の柔軟性が保たれることが多いです。しかし、このリラキシンによる柔軟性の増加は、産後の骨盤の不安定性を引き起こし、腰痛や骨盤の歪みの原因となる可能性が指摘されています。骨盤の不安定さは、腰や背中の痛み、姿勢の悪化などを引き起こす可能性があります。また、骨盤の歪みは、内臓の位置のずれや機能低下、消化不良の原因となることもあります。そのため、産後の適切な骨盤ケアが重要とされています。
経産婦でも妊娠しにくい「二人目不妊」の主な原因
経産婦は妊娠しやすいと言われる一方で、一人目はスムーズに授かったのに、二人目がなかなか妊娠できない「二人目不妊」に悩む人も少なくありません。
二人目不妊には、一人目の時とは異なる、特有の原因が潜んでいる場合があります。
主な原因としては、加齢による体の変化、一人目の出産による影響、育児による生活習慣の乱れ、そしてパートナー側の問題などが考えられます。
第一子の出産時から年齢を重ねている
二人目不妊の最大の原因として挙げられるのが加齢です。
一人目を出産してから数年が経過しているため、母体もその分年齢を重ねています。
特に女性は35歳を過ぎると、卵子の質が徐々に低下し、染色体異常の割合が増加するため、妊娠率が下がり、流産率が上がることが知られています。
卵子の老化は、妊娠のしにくさに直結する重要な要素です。
一人目を若くして出産した場合でも、二人目を考える時期には30代後半や40代に差し掛かっているケースも多く、年齢という要因が大きな壁となることがあります。
一人目の出産による母体へのダメージ
出産は母体に大きな負担をかけるものであり、そのダメージが完全に回復していない場合、次の妊娠に影響を及ぼすことがあります。
例えば、帝王切開による子宮の傷や癒着、会陰切開の傷の回復不良、出産によって引き起こされた骨盤の歪みなどが考えられます。
また、出産時に何らかのトラブルがあった場合、それが子宮や卵管に影響を残している可能性も否定できません。
一人目の出産で体に受けた負担が、気づかないうちに二人目の妊娠を妨げる原因となっているケースがあるため、産後の体のケアは非常に重要です。
育児による生活リズムの乱れやストレス
一人目の育児中は、夜間の授乳や夜泣き対応による慢性的な睡眠不足、自分の食事を後回しにしがちな不規則な食生活、そして常に子ども中心の生活を送ることによる精神的なストレスが蓄積しがちです。
こうした心身への負担は、ホルモンバランスを司る自律神経の乱れを引き起こします。
ホルモンバランスが乱れると、排卵が不規則になったり、無排卵になったりするなど、月経周期に影響が出て、妊娠しにくい状態を招きます。
自分の体を休め、ケアする時間が十分に取れないことが、二人目不妊の一因となります。
パートナー側に原因があるケース
不妊の原因は、女性側だけでなく男性側にある可能性も十分に考えられます。
一人目の時には問題がなかったとしても、パートナーも同じように年齢を重ねており、加齢によって精子の質や運動率、量が低下している場合があります。
また、仕事のストレスや生活習慣の乱れ、肥満なども精子の状態に悪影響を及ぼします。
精索静脈瘤のように、時間とともに進行する男性不妊の原因となる疾患が発症している可能性も考えられます。
二人目不妊を考える際には、女性だけでなく、パートナー側の健康状態にも目を向けることが必要です。
二人目を希望する経産婦が妊娠の確率を上げるためにできること
経産婦であっても、様々な要因で二人目を授かりにくい状況になることがあります。
しかし、妊娠の確率を高めるために、日々の生活の中で取り組めることもあります。
まずは自身の体の状態を正確に把握し、妊娠しやすい体づくりを意識した生活習慣を心がけることが基本です。
ここでは、具体的なセルフケアの方法から、医療機関の受診を検討するタイミングまで、実践できることを紹介します。
基礎体温を記録して排卵日を予測する
基礎体温を毎朝記録することは、自身の体のリズムを知るための第一歩です。
基礎体温の変化を見ることで、排卵がきちんと起こっているか、ホルモンバランスは整っているかなどを推測できます。
特に育児中は生活が不規則になりがちですが、できるだけ同じ時間に計測を続けることで、排卵のタイミングを予測しやすくなります。
排卵日を予測できれば、妊娠の可能性が高い時期に夫婦生活のタイミングを合わせることが可能です。
より正確に排卵日を知りたい場合は、排卵検査薬を併用するのも有効な手段です。
まずは自分の体の状態を客観的に把握することから始めます。
栄養バランスの取れた食生活を意識する
妊娠しやすい体を作るためには、栄養バランスの取れた食事が欠かせません。
育児中は自分の食事がおろそかになりがちですが、意識して質の良い食事を摂ることが重要です。
特に、良質な卵子や子宮内膜の材料となるタンパク質、ホルモンバランスを整えるビタミンやミネラルは積極的に摂取したい栄養素です。
体を冷やす冷たい飲み物や食べ物は避け、血行を促進する温かい食事を心がけます。
インスタント食品や甘いものの摂り過ぎは避け、和食中心のバランスの取れた食生活を基本とすることで、体の内側から妊娠に向けたコンディションを整えていきます。
質の良い睡眠を確保しストレスを溜めない
睡眠不足やストレスは、女性ホルモンの分泌を調整する自律神経の働きに影響を与える可能性があります。育児中は十分な睡眠時間を確保することが困難な場合もあるため、子どもが昼寝をしている間に一緒に休むなど、体を休める時間を少しでも確保する工夫が大切です。
また、ストレスをため込まないように、パートナーに子どもを預けて一人の時間を持ったり、好きな音楽を聴いたりするなど、自分なりのリフレッシュ方法を見つけることも重要です。心身ともにリラックスした状態を保つことは、ホルモンバランスを整えることにつながります。
一年以上妊娠しない場合は婦人科の受診を検討する
避妊をせずに夫婦生活を送っているにもかかわらず、一年以上妊娠に至らない場合は「二人目不妊」の可能性があります。
その際は、一度婦人科を受診して専門家に相談することを検討します。
特に、母親の年齢が35歳以上の場合や、もともと月経不順がある、一人目の出産時に何らかのトラブルがあったなどの場合は、半年程度を目安に早めに受診するのが望ましいです。
検査によって原因が特定できれば、それに合わせた治療を受けることができます。
一人で悩まず、専門家の診断を仰ぐことが、結果的に妊娠への近道となる場合も少なくありません。
まとめ
経産婦は、一度出産を経験したことにより、子宮の血流が良かったり、ホルモンバランスが整いやすかったりと、身体的に妊娠しやすい状態になっていることが多いです。
また、経験による精神的な安心感も、妊娠を後押しする要因となり得ます。
しかしその一方で、一人目の出産からの加齢、育児による生活習慣の乱れやストレス、パートナー側の変化など、初産の時とは異なる要因で「二人目不妊」に直面するケースも少なくありません。
自身の体の状態を把握するために基礎体温をつけ、食生活や睡眠を見直すといったセルフケアが重要です。
そして、一定期間妊娠しない場合は、専門の医療機関に相談するという選択肢もあります。








