自律神経が乱れるとなぜ肩こりが起きる?こりを緩和する方法

    公開日:2025/07/24 

    更新日:2025/08/07

    多くの現代人が悩まされている国民病ともいえる「肩こり」。
    そのしつこくつらい症状の背景には、単なる筋肉の疲労だけでなく、私たちの心と体の司令塔である「自律神経」の乱れが深く関わっている可能性があります。
    この記事では、そんな自律神経の乱れが原因で起こる肩こりについて、なぜそのような症状が現れるのか、そのメカニズムからご自身でできる具体的な予防や緩和方法、鍼灸治療による根本的なアプローチまで、専門家の視点から分かりやすく解説していきます。

    自律神経の乱れと肩こりの関係

    なぜ自律神経が乱れると肩こりが引き起こされるのでしょうか。
    その深い関係性を理解するために、まずは自律神経そのものの働きから見ていきましょう。

    そもそも自律神経とは

    自律神経とは、私たちの意志とは関係なく心臓の動きや呼吸、体温、消化、ホルモン分泌といった生命を維持するためのあらゆる機能を、24時間自動的にコントロールしてくれている非常に重要な神経です。
    この自律神経は、体を活動的に興奮させるアクセルの役割を担う「交感神経」と、体を休息させリラックスさせるブレーキの役割を担う「副交感神経」といった、正反対の働きを持つ二つの神経から成り立っています。
    健康な状態では、この二つの神経がシーソーのようにバランスを取りながら、体の状態を適切に調整しているのです。

    自律神経の乱れが肩こりを起こす理由

    しかし、ストレスや不規則な生活が続くと、自律神経の絶妙なバランスが崩れアクセルである「交感神経」ばかりが過剰に優位な状態になってしまいます。
    交感神経には、血管を収縮させ筋肉を緊張させるという働きがあります。
    つまり、体が常に「戦闘モード」のような緊張・興奮状態に置かれてしまうのです。
    この状態が慢性的に続くと、特にストレスを感じやすい首や肩、背中といった周辺の筋肉は常にガチガチに凝り固まり、血行が悪くなってしまいます。
    血行不良に陥った筋肉には十分な酸素が行き渡らず、乳酸などの疲労物質が溜まっていきます。
    これがしつこい「こり」や「痛み」の正体です。
    自律神経の乱れはまさに肩こりを直接的に生み出す根本的な原因となるのです。

    自律神経が乱れる原因

    なぜ、自律神経のバランスは崩れてしまうのでしょうか。
    その原因は一つではなく、いくつかの要因が複雑に絡み合っていることがほとんどです。

    ストレス

    自律神経のバランスを乱す最大の原因が「ストレス」です。
    仕事上の人間関係や過度なプレッシャーといった精神的なストレスはもちろんのこと、過労や睡眠不足といった身体的なストレス、あるいは騒音や温度変化といった環境的なストレスも含まれます。
    私たちの体は、ストレスを感じるとそれに対抗しようとして、交感神経を活発にさせます。
    この状態が慢性的に続くと、自律神経の切り替えがうまくいかなくなり、常に体が緊張した状態から抜け出せなくなってしまうのです。 

    関連記事:自律神経と頭のこりの関係は?緩和が期待できる方法

    不規則な生活習慣

    不規則な生活習慣も自律神経の乱れに直結します。
    夜更かしや昼夜逆転の生活、あるいは栄養バランスの偏った食生活。こうした不規則なリズムは人間が本来持っている体内時計を狂わせ、自律神経の正常な働きを妨げます。
    特に朝食を抜いたり、就寝前にスマートフォンを長時間見続けるといった習慣は、交感神経と副交感神経のスムーズな切り替えを阻害する大きな原因となります。 

    天候や季節の急激な変化

    季節の変わり目や気圧の変動といった自然環境の変化にうまく適応できず、自律神経が乱れてしまうこともあります。
    特に、低気圧が近づくと副交感神経が優位になり、体がだるくなったり古傷が痛んだりといった不調を感じる方が多くいらっしゃいます。
    また、夏の屋外と冷房の効いた室内の激しい温度差なども、自律神経にとっては大きなストレスとなります。 

    病気

    何らかの身体的な疾患が原因となって、自律神経の乱れが引き起こされることもあります。
    例えば、更年期障害や甲状腺機能障害といったホルモン分泌の異常を伴う疾患は、自律神経の中枢に直接影響を及ぼします。
    また、うつ病や不安障害といった精神的な疾患においても、自律神経のバランスが大きく崩れることが知られています。
    これらの場合は、原因となっている疾患そのものの適切な治療を医療機関で受けることが最優先となります。

    自律神経の乱れが原因の肩こりを防ぐ方法

    では、自律神経の乱れからくるつらい肩こりを予防・緩和するためにはどうすれば良いのでしょうか。
    日々の生活の中で今日からでも始められる6つの具体的な方法をご紹介します。

    食生活に気を配る

    自律神経の働きを正常に保つためには、栄養バランスの取れた食生活が不可欠です。
    特に神経の働きをサポートするビタミンB群(豚肉、レバー、玄米など)や、筋肉の緊張を和らげるマグネシウム(大豆製品、海藻類、ナッツ類)、そして精神を安定させるセロトニンの材料となるトリプトファン(乳製品、バナナなど)を意識的に摂取すると良いでしょう。
    また、体を温め血行を促進する生姜やネギ、根菜類などを食事に取り入れることも肩こりの緩和に繋がります。 

    良質な睡眠を取る

    睡眠は、乱れた自律神経のバランスをリセットするための最も重要な時間です。
    睡眠中に心身をリラックスさせる副交感神経が優位に働くことで、日中の緊張で凝り固まった筋肉が緩み傷ついた細胞が修復されます。
    毎日6時間から8時間の十分な睡眠時間を確保することはもちろん、その「質」を高めることも重要です。
    寝る前のスマートフォンやパソコンの操作は交感神経を興奮させてしまうので控えて、ぬるめのお湯にゆっくり浸かるなどリラックスできる入眠儀式を取り入れましょう。 

    適度に運動する

    デスクワークなどで長時間同じ姿勢を続けていると、筋肉が硬直し血行が悪くなります。
    1時間に一度は立ち上がって肩を回したり背伸びをしたりと、意識的に体を動かす習慣をつけましょう。
    また、ウォーキングやヨガ、水泳といったリズミカルな有酸素運動は、全身の血行を促進し自律神経のバランスを整えるのに非常に効果的です。
    激しい運動はかえって交感神経を高ぶらせてしまうため、ご自身が「心地よい」と感じるレベルの運動を継続することが大切です。 

    首を温める

    首の周りには、自律神経の働きに深く関わる重要な神経や血管が集中しています。
    そのため首元を温めることは副交感神経を優位にし、心身をリラックスさせるうえで非常に効果的です。
    蒸しタオルやホットアイマスクなどで首の後ろや目の周りをじんわりと温めてみましょう。
    全身の血行が良くなり、ガチガチだった肩の力がすっと抜けていくのを感じられるはずです。
    特に就寝前に行うと、質の良い深い眠りへと導いてくれます。 

    深呼吸をする

    意識的にゆっくりとした深い呼吸を行うことは、いつでもできる最も手軽な自律神経の調整法です。 ストレスや緊張を感じたときに鼻からゆっくりと息を吸い込み、口からさらにゆっくりと時間をかけて息を吐き出します。
    特に「吐く息」に意識を集中するのがポイントです。 深い呼吸は副交感神経の働きを高め、心拍数を落ち着かせ筋肉の緊張を和らげる効果があります。
    仕事の合間や就寝前などに数分間行うだけでも、心身がリフレッシュされるのを感じるでしょう。 

    鍼灸を受ける

    こうしたセルフケアだけでは改善しない慢性的な深刻な肩こりには、「鍼灸治療」という東洋医学からのアプローチが非常に有効な選択肢となります。
    鍼灸治療は、痛みの根本原因である自律神経の乱れそのものに、直接的に働きかけることができます。
    首や肩、背中にある自律神経の働きを調整するツボに鍼やお灸で刺激を与えることで、過剰に高ぶった交感神経の働きを鎮め心身をリラックスモードへと切り替えます。
    これにより、筋肉の異常な緊張が緩和され血行が促進し、痛みやこりが根本から改善されていくのです。
    薬に頼らず、人が本来持つ「整える力」を引き出す安全で効果的な治療法です。

    関連記事:自律神経失調症には針灸が効く?その理由とは

    自律神経の乱れは肩こりに現れることがある

    今回は多くの方を悩ませる慢性的な「肩こり」と、その背景にある「自律神経の乱れ」について、そしてその改善策について詳しく解説しました。
    原因不明のつらい不調が続くとき。それはご自身の心と体が発している「休んでほしい」「もっと自分を大切にしてほしい」という悲痛な叫びなのかもしれません。
    その声に真摯に耳を傾け、薬で症状に蓋をするだけでなくご自身の生活そのものを見つめ直し、体が本来持つ「治る力」「整える力」を信じてみませんか。

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    この記事の監修者

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    藤鬼 千子

    住吉鍼灸院総院長

    東洋鍼灸専門学校卒業後、2011年4月に住吉鍼灸院に入社し、9年間住吉鍼灸院院長として従事。
    現在は総院長として妊娠を望むすべてのご夫婦に貢献している。

    《資格》

    はり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師、不妊カウンセラー

    《経歴》

    東洋鍼灸専門学校 卒業
    住吉鍼灸院 院長就任
    住吉鍼灸院 総院長就任

    《所属》

    日本不妊カウンセリング学会会員

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